看護師で、ひとりで育てるということ。離婚しなかった、もう一つの理由。

看護師で、ひとりで育てるということ。離婚しなかった、もう一つの理由。

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離婚しなかった理由は、一つじゃない。

以前、「夫の収入が安定していたから」と書いた。でも本当は、もう一つ大きな理由があった。看護師として働きながらシングルマザーで子育てをすることの、現実を知ったからだ。

看護師で稼ごうと思ったら、夜勤は避けられない

看護師の給料は、夜勤手当で大きく変わる。夜勤のない働き方だと、手取りは月十数万円にとどまる。私自身、いま介護施設で働いていて、その範囲だ。ひとりで子供を育て、家賃や生活費を全部まかなおうと思ったら、この額では厳しい。

ある程度の収入を確保しようと思うと、夜勤をこなすしかない。そうなると、夜は家にいない。土日も仕事になる。

それが何を意味するか、考えた。

子供のそばにいられない夜

夜勤がある日、子供は一人で家にいることになる。小学生のうちはまだいい。でも幼い子供が夜、親なしで家にいる状況は、現実的ではなかった。誰かに預けるにしても、毎回というわけにもいかない。

土日も働けば、子供の試合も、発表会も、参観日も行けなくなる。「お母さんは仕事だから」という言葉を、何度も言い続けることになる。

習い事も、諦めさせるしかない

子供にやりたいことをさせてあげたかった。スポーツでも、音楽でも、何か一つでも好きなことを見つけてほしかった。

でも習い事には送り迎えが要る。土日の試合や発表会にも親が来ることを前提にしているものも多い。夜勤明けで体がボロボロの状態で、それを続けていけるか。子供が「やりたい」と言ったとき、「仕事だから無理」と言い続けることになる未来が見えた。

そのとき初めて気がついた。私が離婚して一人で育てることは、子供に「諦める練習」をさせることになるかもしれない、と。

計算はしていない。計算するまでもなかった

ここまで書くと、家賃や生活費を紙に書き出して、電卓をたたいて判断したように見えるかもしれない。

でも、していない。

計算するまでもなく、無理だと分かった。

数字を出す前に、生活のほうが先に見えてしまったからだ。夜、家にいない自分。土日に仕事へ出ていく自分。「今日も行けない」と言っている自分。そこまで想像できたら、もう電卓は要らなかった。

だからもし、同じことで迷っている人がいたら、家計簿より先にやってみてほしいことがある。ある一日を、朝から夜まで、順番に想像してみることだ。何時に起きて、誰が子供を送り出して、自分は何時に出て、何時に帰るのか。

できるかどうかは、たいてい、数字より先にそこで分かる。

お金の問題ではなかった。削られるのは、子供のほうだった

ここは、はっきり書いておきたい。

私は、免許があるから、離婚してもやっていけると思っている。

看護師の資格を取った時点で、そこは越えた。食べていけるかどうかで言えば、たぶん、なんとかなる。離婚しなかったのは、自分が食べていけないからではない。

なんとかならないのは、子供のほうだった。

  • 送り迎えができない
  • 習い事は、諦めてもらうことになる
  • 土日も、夜も、家にいない
  • 食事は、手抜きになる

ひとつひとつは、たいしたことではないのかもしれない。でも全部が同時に起きる。そして、そのしわ寄せを受けるのは私ではなく、子供のほうだ。

それが、辛かった。

だから、離婚しない。お金の計算で引き返したのではなく、子供の毎日が削られるところで引き返した。そこだけは、どうしても踏み越えられなかった。

離婚しなかった今も、自立はしておきたかった

誤解してほしくないのは、シングルマザーで看護師をしながら育てている人を否定したいわけじゃない。実際、そうやってやり遂げている人はたくさんいる。すごいと思う。

ただ、私には無理だと判断した。自分の体力と、子供への影響と、収入のバランスを考えたとき、今の選択の方が子供にとってもいいと思った。

看護師免許を取ったのは、離婚するためだった。でも免許を取ってわかったことがある。「いつでも離婚できる状態でいること」が、今の私には十分だということ。

経済的に依存しきっていた頃とは違う。逃げようと思えば逃げられる。その安心感が、今の家庭を続ける理由になっている。

手の込んだ料理を作る時間がない

もう一つ、気がついたことがある。食事のことだ。

夜勤明けで帰宅して、子供のために一から料理を作る。それができるか、と考えたとき、正直難しいと思った。夜勤は体力を根こそぎ持っていく。帰ってきたらまず横になりたい。でも子供はお腹を空かせている。

結果的に、毎日お惣菜やコンビニに頼ることになる。子供に「ちゃんとしたごはん」を食べさせてあげたいと思っていても、体が動かない。看護師として患者さんのケアは全力でできる。でも帰宅後に家族のために料理する余力は、残っていない。

今の生活では、週末に少し手を込んだ料理を作ることができる。それが当たり前にできなくなるのは、私にとって辛かった。

体を壊せば、元も子もない

そして、何より大きかったのが、自分の体力の問題だ。

看護師の仕事は、思った以上に体を使う。患者さんの体位変換、長時間の立ち仕事、精神的なプレッシャー。それを夜勤でこなしながら、翌朝には子供の朝食を作って学校へ送り出す。そんな生活を続けて、私の体が持つとは思えなかった。

もし私が体を壊したら、どうなるか。子供の面倒を見る人がいない。収入が途絶える。せっかく取った看護師免許も、働けなければ意味がない。

「自立する」ために看護師になったのに、無理をして倒れては元も子もない。自分が健康でいることが、子供を守る一番の条件だと気づいた。

離婚しなかったのは、弱さじゃない。長く働き続けるための、現実的な判断だったと今は思っている。

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