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病棟で働いたのは、2か月だった。
正直に書く。
病棟にいたのは、2か月だった
40代で看護師免許を取って、最初の職場は総合病院の病棟だった。
先輩たちは、優しい人ばかりだった。40代で入ってきた新人の私に、時間をかけて、丁寧に教えてくれた。人間関係で困ったことは、一度もない。
それでも、2か月で辞めた。
理由は、帰る時間が読めないことだった。
就職して1週間目、急な対応が入って1時間以上の残業になった日がある。仕事なので、仕方のないことだ。でもそのとき私の頭にあったのは、患者さんのことではなく、家で待っている子どものことだった。
仕事中だから、連絡は入れられない。何も言わないまま、いつもより遅く帰る。子どもは、母親が何時に帰ってくるのか分からないまま、待つことになる。
たった1時間、と思う人もいると思う。でも、その1時間の意味は、人によって違う。
そして、それは前もって分かるものではなかった。今日は早く帰れるのか、遅くなるのか。その日にならないと分からない。それがこの先ずっと続く。
1週間目で、無理だ、と思った。
夜勤は、まだ始まっていなかった
ここは、はっきり書いておきたい。
私は、夜勤に一度も入っていない。
2か月のあいだ、まだ夜勤は始まっていなかった。日勤で仕事を覚えている段階だった。
でも、いずれ始まることは決まっていた。夜勤のある病棟だったのだから、当然だ。
つまり私は、やってもいないうちに「無理だ」と判断したことになる。
そのことは、ずっと引っかかっている。「やってみてから決めるべきだったのでは」「一度もやらないまま逃げたのでは」。何度もそう思った。
それでも、想像はできた。日勤だけでも帰る時間が読めないのに、そこに夜勤が入ったら、家はどうなるのか。子どもは、何時に帰るか分からない母親を、夜も待つことになる。
「やってみないと分からない」は、正しいと思う。でも、やってみてからでは戻れないこともある。私にとっては、そこだった。
もし今、「まだやってもいないのに」と自分を責めている人がいたら、そこは責めなくていいと思う。始まる前に分かることも、ある。
駐車場で泣いたのは、辞めさせてもらえなかった日だった
この2か月で、一度だけ泣いた。職場の駐車場だった。
でもそれは、仕事がつらかった日ではない。辞めたいと言ったのに、辞めることを認めてもらえなかった日だった。
「辞めます」と言い出すこと自体が、想像していた何倍もつらかった。丁寧に教えてくれた先輩たちに向かって、それを言う。あの申し訳なさは、今でもはっきり覚えている。
しかも、言ってからも終わらなかった。なかなか受け入れてもらえなくて、何度も何度も話し合いをした。「もう少し続けてみたら」「慣れれば変わるから」。ありがたい言葉だ。ありがたいけれど、そのたびに同じ説明を繰り返すのは、正直、しんどかった。
辞めるのは、紙を出したら終わり、ではなかった。
だから、これから辞めようとしている人に、ひとつだけ言えることがある。揺れない理由を、ひとつだけ用意しておいてほしい。私の場合は「家庭を優先できないなら、無理」だった。話し合いのたびに、そこへ戻ればよかった。理由をいくつも並べると、ひとつずつ潰されていく。
なぜデイサービスを選んだか。土日出勤は、分かっていた
「夜勤のない仕事に変わりたい」
それを軸に、求人を探した。
クリニック、健診センター、訪問看護、デイサービス。いくつか見ていく中で、デイサービスの求人が目に入った。
日勤のみ。残業は少なめ。ただし、土日も出勤だった。
これは、入ってから分かったことではない。最初から分かったうえで選んだ。
土日に休めないのは、子どもがいる家庭にはきつい。それでも選んだのは、夜勤がないことのほうが大きかったからだ。
ここも正直に書いておきたい。転職先を選ぶとき、条件が全部そろう場所は無かった。選んだというより、何を諦めるかを決めた、という感覚が近い。
私が諦めたのは、土日だった。譲れなかったのは、帰る時間が読めることだった。
看護師を辞めるよりも、環境を変えるほうがいいと思った。
デイサービスの仕事、実際のところ
利用者さんは、毎日顔なじみの方が多い。
「おはよう」と言うと、「おはよう」と返ってくる。名前を覚えてもらえる。「今日も来たね」と笑ってもらえる。
病棟にいたころは、ベッドの回転を意識しながら動いていた。ここでは違う。
処置は少ない。急変もほとんどない。
最初は「看護師の仕事をしている感じがしない」と思っていた。
でも続けていくうちに、これも看護だと思えるようになった。
バイタルを測る。いつもと違う様子に気づく。家族に報告する。
その積み重ねが、利用者さんの毎日を支えている。(デイサービス看護師の仕事内容はこちらに詳しく書きました)
給料は下がった。後悔はしていない
手取りは、病棟のころより下がった。
でも、帰る時間が読めるようになった。
今日は何時に帰れるのか、朝の時点で分かる。子どもに「今日はこのくらいに帰るね」と言って家を出られる。それだけのことが、病棟ではできなかった。
土日は出勤だ。だから、全部が良くなったわけではない。
それでも、お金と引き換えに手に入れたものは、確かにあると思っている。
転職を考えている人へ
40代での転職は、怖かった。
「また一から慣れなければいけない」「年下の先輩に教えてもらうのか」という気持ちもあった。
それでも動いたのは、今の場所で消耗し続けることが正解だとは思えなかったから。
看護師の資格があれば、働ける場所はたくさんある。
病棟だけが、看護師の仕事じゃない。
施設、クリニック、訪問、デイサービス。自分に合う場所は、必ずどこかにある。
そして、辞めた期間の短さは、思っているほど致命傷にはならなかった。2か月で辞めた私でも、次の職場は決まった。
転職して、ひとつわかったことがある。
環境が変わると、自分が変わる。
🗺 40代の看護師が働き方で迷ったときに読む記事
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