看護学校在学中、就職予定の病院から180万円の奨学金を借りた。
でも私は、その1円も使わなかった。
怖くて、使えなかった。
縛られることが、怖かった
家庭が最優先だった。子供がいて、夫がいて、何かあれば仕事を辞めなければいけない日が来るかもしれない。そう思ったとき、奨学金という「縛り」が重くのしかかってきた。
もし辞めることになったら、返さなければいけない。だったら最初から使わなければいい。そう決めた。
縛られたくなかった。でも使う勇気もなかった。だからずっと積み立てていた。
毎月振り込まれる奨学金を、手をつけずにそのまま貯め続けた。看護学校の3年間、ずっとそうした。生活費は職業訓練支援金でまかなっていたから、なんとかなった。
就職して、すぐに退職を申し出た
卒業後、その病院に就職した。でも長く続けるつもりはなかった。家庭を第一に考えたとき、答えは決まっていた。
最後の職業訓練支援金を受け取るために、就職して雇用保険に入る必要があった。それが済んだ直後、退職を申し出た。5月末で退職することになり、退職日までに奨学金を一括返済する必要があった。
180万円を返した日
返済の日、通帳から180万円が消えた。でも不思議と、怖くなかった。3年間ずっと「これは使えないお金」として積み立ててきたから、心の準備ができていた。
返した瞬間、すっと気持ちが軽くなった。
縛りがなくなった。どこで働いても、いつ辞めても、自分で決められる。そう思えた。
不安だったから、貯められた
計画的にやったというより、不安だったから使えなかっただけだ。でも結果として、その不安が自分を守ってくれた。
家庭を守りたい。自由でいたい。その気持ちが、180万円を手つかずのまま保ち続けさせた。
お金を貯めることは、自分の選択肢を守ることだと思った。