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看護学校に入ったとき、病院奨学金を借りた。卒業後にその病院で働くことが条件の、いわゆる「お礼奉公」つきの奨学金だ。看護学校のお金をどう工面したか、正直に書く。
病院が出してくれるやつだった。
月に数万円、3年間もらえる制度で、「卒業したらうちの病院で働いてね」という条件がついていた。総額は180万円だった。
ありがたい制度だと思っていた。
看護学校の学費のことで頭が痛かったから、どんな助けでも嬉しかった。
卒業後、奨学金の病院へ就職した
卒業後、その病院に就職した。
条件通りに、奨学金をもらった病院で働き始めた。
でも、入職してすぐに気がついた。
家庭との両立が、難しい。
子どものこと、家のこと。
看護師の仕事は、思っていた以上に体力を使う。
そして何より、帰る時間が読めなかった。急な対応が入れば残業になる。その日にならないと、何時に帰れるか分からない。それがこの先ずっと続くと思った。
2ヶ月で、退職を申し出た。
奨学金を返済して、やめた
退職を決めたとき、奨学金の返済が待っていた。
条件を満たさずに辞めるので、全額返さないといけない。
幸い、看護学校在学中に教育訓練支援給付金という制度を使っていた。
月に13万円が支給される制度で、学校に通っていた間の生活費は、ほぼそれで賄っていた。
おかげで奨学金には手をつけずに済んでいて、全額積み立てたままにしてあった。
5月末で退職し、奨学金を全額返済した。
3年分の奨学金が、一瞬でなくなった。
でも、変な感じがした。
なくなったのに、すっきりしていた。
「これで、どこにでも行ける」という気持ちだった。
家庭を第一優先で働ける職場へ
次に選んだのは、デイサービスだった。
夜勤なし。残業もほぼない。
朝の時点で、今日は何時に帰れるかが分かる。
家族との時間を犠牲にしなくていい。
看護師の資格を活かしながら、家庭を第一優先で働ける職場を選んだ。
奨学金の病院を辞めたのは、逃げじゃない。
自分と家族にとって、本当に必要なものを選んだ結果だと思っている。
お金を返すまで、退職届は出せなかった
ここが、いちばん伝えたいところだ。
奨学金を返すまで、退職届を出させてもらえなかった。
「辞めます」と言って、退職届を出して、あとからゆっくり返す——そういう順番ではなかった。先に180万円を返す。それから、退職の手続きに入る。その順番だった。
手続きは、病院の経理でおこなった。私は3年間まったく手をつけていなかったので、一括で返すことができた。すぐに返した。
でも、もし使っていたらどうなっていたか。
手元に180万円がなければ、私は辞められなかった。
働きながら少しずつ返す形になったのか、返し終わるまで辞められなかったのか、そこは分からない。ただ、あの場で「返します」と言えなかったら、話が前に進まなかったことだけは確かだ。
だから、これから病院奨学金を借りる人に伝えたい。あれは「もらったお金」ではなく、「預かっているお金」だと思っておいたほうがいい。
使ってしまうと、合わない職場だと分かっても、辞める話し合いのテーブルにすらつけなくなる。
引き止められはした。でも、お金が理由ではなかった
誤解のないように書いておくと、お金を盾に引き止められた、ということはなかった。
「辞めます」と言ってから、話し合いは何度もあった。なかなか受け入れてもらえなくて、そのたびに同じ説明を繰り返した。
でもそれは「奨学金はどうするんだ」という話ではなかった。「もう少し続けてみたら」「慣れれば変わるから」。心配してくれる言葉のほうだった。
お金のせいで辞めにくい、と感じたことは一度もない。
つらかったのは、金額ではなかった。40代で入ってきた新人の私に、時間をかけて丁寧に教えてくれた人たちに向かって、「辞めます」と言うこと。そっちだった。
手をつけなかった本当の理由
奨学金を積み立てておいたのは、正直なところ、「いざとなれば辞められる」という安心感のためでもあった。
お金があれば、選択肢が生まれる。
合わないと思ったとき、すぐに動ける。
それが、3年間ずっと奨学金に手をつけなかった理由だ。
「就職先を、お金に縛られて選びたくない」という気持ちもあった。
でも実際は、入ってみないとわからないことが多い。
どんなに慎重に選んでも、やってみて初めてわかることがある。
だから、「いつでも動けるお金」を持っておくことが、本当の意味での自由だと思っている。
看護学校を目指す人へ
病院奨学金は、うまく使えば強い味方になる。
学費の足しになるし、返済免除になれば実質お金をもらいながら就職先も決まる。
でも、条件はちゃんと読んでほしい。
- どの病院で、何年間働かないといけないのか
- 途中で辞めたら、いくら返すのか
私のように、2ヶ月で辞めることになる可能性もある。
家庭の状況、体のこと、職場の環境、やってみないとわからないことはたくさんある。
だから、「返せるお金を手元に残しておく」ことをすすめたい。
奨学金を使い込んでしまうと、辞めたくても辞められなくなる。
教育訓練支援給付金のことも知っておいてほしい。
ハローワークで手続きすれば、看護学校在学中に月13万円もらえる制度がある。
これがあれば、奨学金に手をつけなくても生活できる可能性がある。
まずはハローワークに相談してみることをすすめる。
専門実践教育訓練給付金という制度もあって、学費の一部が戻ってくる。
私の場合は授業料の約7割、およそ170万円が戻ってきた。
ただし学費・教科書・諸経費を合わせた総額は約275万円だったので、持ち出しは100万円ほど残っている。「全部タダになる」ではない。(この制度の詳しい話はこちら)
看護学校=お金が大変、という思い込みは一度捨てた方がいい。
制度を使えば、意外となんとかなる。
5月末で職場を去った日、少しだけ泣いた。
悔しかったわけじゃない。
ただ、「ここじゃなかった」ということを、自分の体が教えてくれた気がした。
家庭を第一優先で働ける場所を選んだことを、後悔したことは一度もない。
それが、私にとっての正解だった。
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